ASANOT BLOG / 淺野卓夫の日誌

編集者。本、旅、考える時間。

温又柔の小説『空港時光』

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026954/ 休日の海辺の町で、作家・温又柔の『空港時光』を読む。 空港建築が好きで、空港を描いた映画や音楽が好きで、いつか日本語で書かれた本格的な空港小説を読みたいと願ってきたエアポート・マニアの私にとっ…

木村友祐「生きものとして狂うこと 震災後七年の個人的な報告」ほか

http://www.shinchosha.co.jp/shincho/ 「新潮」8月号に掲載。作家・木村友祐の「生きものとして狂うこと 震災後七年の個人的な報告」、これは一人でも多くの人に読んでほしい名エッセイだ。 東日本大震災後の「東北」におぼえる悔しさ、悲しさを抜きにして…

詩人・山尾三省と『80年代』

http://www.shinsensha.com/80nendai.html 脱原発、エコロジー、食と農、コミューン、ちいさな仕事・お金の作り方、オルタナティブな教育、社会運動、精神世界、ミニコミやリトルプレス。 以上は、雑誌『80年代』(後に『自然生活』に改称し、97年に休刊)の…

津島佑子コレクション『悲しみについて』『ナラ・レポート』

http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b282980.html 津島佑子が亡くなったよ。 2016年2月、ネットニュースで小説家の訃報に接し、台湾の友人へすぐにメッセージを送信した。学生時代からの友人である彼女は日本文学の研究者で、津島佑子の長編『ヤマネコ・ド…

管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』

『文藝』2010年春号に寄稿した書評を再掲載します。 http://sayusha.com/catalog/books/longseller/pisbn9784903500591c0090 奄美の島への旅から戻ると、冬の自宅でこの本の読書がまっていた。波と南風、光と夜の鳥の声の鮮烈な記憶の渦巻く頭で、文字を追う…

単独性にたった連帯をうながす「物語」とは 星野智幸の小説『焔』

http://www.shinchosha.co.jp/book/437204/ 星野智幸の小説『焔』を読了。2018年1月末の刊行。ちらちらと目にする口コミや予感から、読んだらハマって抜け出せなくなるのではないかと恐れて今日まで禁欲してきたのだが、近所のK書店でついに手を出してしま…

岡村淳のドキュメンタリー『リオ フクシマ 2』と山尾三省の詩

ブラジルの記録映像作家、岡村淳さんの最新作『リオ フクシマ 2』の上映会に参加した。期待をはるかに上回る、素晴らしい作品だった。そして予想に反して、鑑賞後にこれほど静かな気持ちになれる作品だと思わなかった。 映像作品から受け取ったメッセージを…

赦しのドキュメンタリー 岡村淳『ばら ばら の ゆめ』

http://www.minatonohito.jp/products/137_01.html 昨晩(2018年2月18日)、西荻窪のAPARECIDAでブラジルの記録映像作家、岡村淳さんのライブ上映会に参加し、ドキュメンタリー作品『ばら ばら の ゆめ』を鑑賞した。今も胸騒ぎがしている。ファースト・イ…

君のものではない、世界の声に耳をすませろ 宮内勝典の文学

西子智さん編集のZine『ライフ 本とわたし』(2017年10月)に寄稿したエッセイを再掲載します。 https://life-hontowatashi.tumblr.com/ 右に行くべきか、左に行くべきか。前に進むべきか、後ろに退くべきか。人生の岐路に立たされた時、自分のなかをどれだ…

温又柔の小説『真ん中の子どもたち』ほか

『たった一つの、私のものではない名前』 いまから10年ほど前のことだ。あるブックフェアに出展者として参加した際、私と背中合わせのブースに座っていたのが、「葉っぱの坑夫」の大黒和恵さんだった。葉っぱの坑夫は非営利のウェブ・パブリッシャー。ウェブ…

植本一子の3冊の本

「コインランドリーに行き、一人になったとき、泣きそうになった。本当に、これからどうなるのだろう。乾燥機にかけているあいだにスーパーへ行くが、何を買えばいいのかがよくわからない。帰り道に銀杏の匂いを感じて、また辛くなった。この秋と去年の秋は…

木村友祐の小説『イサの氾濫』ほか

『イサの氾濫』 木村友祐の小説『イサの氾濫』(未來社、2016)を読んだ。期待を裏切らない、素晴らしい小説だった。私自身が生きる今という時代に必要な文学の力を感動とともに噛み締めている。 歴史が実証するものに学び、それを未来に伝えることは、今と…

本の編集者としてのこの10年とこれからのこと

出版社・瀬戸内人退職のご挨拶 2017年11月20日、私はFacebookに以下の投稿をしました。そのまま引用します。 本日をもって株式会社 瀬戸内人(せとうちびと)を退職することになりました。 お世話になった皆様お一人お一人に対して、本来ならば直接ご挨拶に…

歴史に抗する野生の移民文学

『すばる』2010年11月に寄稿した書評(松井太郎著、西成彦・細川周平編『うつろ舟 ブラジル日本人作家・松井太郎小説選』)を再掲載します。 1917年生まれ、日本語で書く現役最長老級の小説家による初の作品集だ。ただし著者は「日本」文学の伝統に属す…

原民喜『幼年画』のことなど

『三田文学』2016年冬季号に寄稿したエッセイを再掲載します。 詩人・作家の原民喜の短編小説「貂」の冒頭に、私の好きなこんな場面ある。 帰り路の屋根の色は青く黒く、灯は黄色だった。「夜、色鉛筆使っても駄目よ、黄色なんか白と間違えるから」と姉の菊…

寡黙な「読者」忘れない

2016年12月24日付「毎日新聞」大阪版に寄稿したエッセイを再掲載します。 さまざまな縁がつながって、私が瀬戸内の島に移住したのは、今から4年前のことだ。関東で編集者として仕事をしながら、出版業界が東京に一極集中して、地方の声を伝えられない現状に…

本当の自由とは何か

『山と渓谷』2016年10月号に寄稿した書評「今月の一冊・『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』今福龍太著」を再掲載します。 森に吹く「自由」の風が、不思議な親しさをもって、読書に集中する額をなでていく。本を介して野の道を逍遥する者の心に、ハックルベリ…

詩と夜空にかがやくもの

小学校から帰ってきた幼いむすめが、しょんぼりしている。何ごとかと思って聞いてみいても、なかなか答えない。親としてはとても気になるけれど、まあ、そんな日もあるだろう。 実を言えば、ぼくもひどく落ち込んでいたのだった。 冬の星座でも見にいこうか…

神戸新聞を読んで 4

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。第4回、最終回です。 誰かと一対一で対面する時に自分の顔を見ることはできない。手掛かりは目の前にいる相手の表情しかない。その顔に笑みが浮かんでいるか、…

神戸新聞を読んで 3

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。第3回です。 8月に開幕を迎えるリオデジャネイロ五輪。スポーツ面を中心にブラジル関連の記事が目立ってきた。 本紙がその名を冠する神戸という町は、190…

神戸新聞を読んで 2

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。第2回です。 昨年、縁があって香川県の仲間とともに「瀬戸内人」という出版社を設立した。瀬戸内や四国に根ざし、地域の歴史や文化、民俗に学びながら、海辺の…

神戸新聞を読んで 1

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。 5月27日、アメリカのオバマ大統領が現職として初めて被爆地・広島を訪問し、核兵器廃絶を訴える演説を行った。その一方で同じ5月、北朝鮮では第7回朝鮮…

サウダージ・ブックスは「ひとり出版者」を卒業します!

昨年2015年、私、「サウダージ・ブックス」の淺野卓夫は、ご縁があって香川県の仲間とともに「株式会社 瀬戸内人」という出版・メディア事業をおこなうベンチャー企業を設立しました。 仲間というのは、高松市をベースに雑誌「せとうち暮らし」を制作・発行…