ASANOT BLOG

本、ローカル、考える時間。編集者・淺野卓夫(あさのたかお)の日記

歴史に抗する野生の移民文学

『すばる』2010年11月に寄稿した書評(松井太郎著、西成彦・細川周平編『うつろ舟 ブラジル日本人作家・松井太郎小説選』)を再掲載します。 1917年生まれ、日本語で書く現役最長老級の小説家による初の作品集だ。ただし著者は「日本」文学の伝統に属す…

原民喜『幼年画』のことなど

『三田文学』2016年冬季号に寄稿したエッセイを再掲載します。 詩人・作家の原民喜の短編小説「貂」の冒頭に、私の好きなこんな場面ある。 帰り路の屋根の色は青く黒く、灯は黄色だった。「夜、色鉛筆使っても駄目よ、黄色なんか白と間違えるから」と姉の菊…

寡黙な「読者」忘れない

2016年12月24日付「毎日新聞」大阪版に寄稿したエッセイを再掲載します。 さまざまな縁がつながって、私が瀬戸内の島に移住したのは、今から4年前のことだ。関東で編集者として仕事をしながら、出版業界が東京に一極集中して、地方の声を伝えられない現状に…

本当の自由とは何か

『山と渓谷』2016年10月号に寄稿した書評「今月の一冊・『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』今福龍太著」を再掲載します。 森に吹く「自由」の風が、不思議な親しさをもって、読書に集中する額をなでていく。本を介して野の道を逍遥する者の心に、ハックルベリ…

詩と夜空にかがやくもの

小学校から帰ってきた幼いむすめが、しょんぼりしている。何ごとかと思って聞いてみいても、なかなか答えない。親としてはとても気になるけれど、まあ、そんな日もあるだろう。 実を言えば、ぼくもひどく落ち込んでいたのだった。 冬の星座でも見にいこうか…

神戸新聞を読んで 4

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。第4回、最終回です。 誰かと一対一で対面する時に自分の顔を見ることはできない。手掛かりは目の前にいる相手の表情しかない。その顔に笑みが浮かんでいるか、…

神戸新聞を読んで 3

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。第3回です。 8月に開幕を迎えるリオデジャネイロ五輪。スポーツ面を中心にブラジル関連の記事が目立ってきた。 本紙がその名を冠する神戸という町は、190…

神戸新聞を読んで 2

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。第2回です。 昨年、縁があって香川県の仲間とともに「瀬戸内人」という出版社を設立した。瀬戸内や四国に根ざし、地域の歴史や文化、民俗に学びながら、海辺の…

神戸新聞を読んで 1

2016年6月に神戸新聞にて、週1回の紙面批評の連載(4回)を担当しました。ブログに再掲載します。 5月27日、アメリカのオバマ大統領が現職として初めて被爆地・広島を訪問し、核兵器廃絶を訴える演説を行った。その一方で同じ5月、北朝鮮では第7回朝鮮…

サウダージ・ブックスは「ひとり出版者」を卒業します!

昨年2015年、私、「サウダージ・ブックス」の淺野卓夫は、ご縁があって香川県の仲間とともに「株式会社 瀬戸内人」という出版・メディア事業をおこなうベンチャー企業を設立しました。 仲間というのは、高松市をベースに雑誌「せとうち暮らし」を制作・発行…