ASANOT BLOG / 淺野卓夫の日誌

編集者。本、旅、考える時間。

書評

津島佑子コレクション『悲しみについて』『ナラ・レポート』

http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b282980.html 津島佑子が亡くなったよ。 2016年2月、ネットニュースで小説家の訃報に接し、台湾の友人へすぐにメッセージを送信した。学生時代からの友人である彼女は日本文学の研究者で、津島佑子の長編『ヤマネコ・ド…

管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』

『文藝』2010年春号に寄稿した書評を再掲載します。 http://sayusha.com/catalog/books/longseller/pisbn9784903500591c0090 奄美の島への旅から戻ると、冬の自宅でこの本の読書がまっていた。波と南風、光と夜の鳥の声の鮮烈な記憶の渦巻く頭で、文字を追う…

単独性にたった連帯をうながす「物語」とは 星野智幸の小説『焔』

http://www.shinchosha.co.jp/book/437204/ 星野智幸の小説『焔』を読了。2018年1月末の刊行。ちらちらと目にする口コミや予感から、読んだらハマって抜け出せなくなるのではないかと恐れて今日まで禁欲してきたのだが、近所のK書店でついに手を出してしま…

温又柔の小説『真ん中の子どもたち』ほか

『たった一つの、私のものではない名前』 いまから10年ほど前のことだ。あるブックフェアに出展者として参加した際、私と背中合わせのブースに座っていたのが、「葉っぱの坑夫」の大黒和恵さんだった。葉っぱの坑夫は非営利のウェブ・パブリッシャー。ウェブ…

植本一子の3冊の本

「コインランドリーに行き、一人になったとき、泣きそうになった。本当に、これからどうなるのだろう。乾燥機にかけているあいだにスーパーへ行くが、何を買えばいいのかがよくわからない。帰り道に銀杏の匂いを感じて、また辛くなった。この秋と去年の秋は…

木村友祐の小説『イサの氾濫』ほか

『イサの氾濫』 木村友祐の小説『イサの氾濫』(未來社、2016)を読んだ。期待を裏切らない、素晴らしい小説だった。私自身が生きる今という時代に必要な文学の力を感動とともに噛み締めている。 歴史が実証するものに学び、それを未来に伝えることは、今と…

歴史に抗する野生の移民文学

『すばる』2010年11月に寄稿した書評(松井太郎著、西成彦・細川周平編『うつろ舟 ブラジル日本人作家・松井太郎小説選』)を再掲載します。 1917年生まれ、日本語で書く現役最長老級の小説家による初の作品集だ。ただし著者は「日本」文学の伝統に属す…

本当の自由とは何か

『山と渓谷』2016年10月号に寄稿した書評「今月の一冊・『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』今福龍太著」を再掲載します。 森に吹く「自由」の風が、不思議な親しさをもって、読書に集中する額をなでていく。本を介して野の道を逍遥する者の心に、ハックルベリ…